人に対する畏怖の念を忘れない。

 忘れがちだけど、人は恐ろしい生き物です。大半の人が、自分の利害に関わらないのに、ある他人が視野に入った、あるいはある他人について話を聞いたというだけで、そのある他人をそのある他人の周囲や自分に同調させようとする。あるいは知っているものに無理矢理当てはまるよう強要する。


 ミルグラムの実験という実験がある。これは教授に「別の部屋にいるある人に問題を与え、問題に間違えたら電気ショックを与えろ。その強さは間違えるたびに大きくしなさい」と指示された被験者が、どういう行動を取るかと言うもの。別の部屋の人から、もうやめてくれと悲痛な声が聞こえても、教授に続けろと言われると、65%の人が罰を与えた。


 ある複数人の回答者がいる部屋で、答えの明らかな質問を尋ねられ、別の回答役者全員がわざと間違えるという状況で、いくつも質問をしていくと、被験者(実験一回につき一人)の中の75%は、最終的に周りに合わせて間違えた。これは集団思考といわれる。このふたつの実験から、大半の人は、善悪・正誤よりも、周囲に合わせることのほうに興味を持つことがわかる。


 自分が周囲に合わせるだけで済めばいいのだけど、他人にまでそれを求める人が本当に多い。たぶん半分以上いるだろう。